ブラックホーク・ダウン | |
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Black Hawk Down | |
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監督 | リドリー・スコット |
脚本 |
ケン・ノーラン スティーヴン・ザイリアン |
製作 |
リドリー・スコット ジェリー・ブラッカイマー |
製作総指揮 |
サイモン・ウェスト マイク・ステンソン チャド・オーマン ブランコ・ラスティグ |
出演者 |
ジョシュ・ハートネット ユアン・マクレガー |
音楽 |
リサ・ジェラード ハンス・ジマー |
撮影 | スワヴォミール・イジャック |
編集 | ピエトロ・スカリア |
配給 |
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公開 |
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上映時間 | 145分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
製作費 | $92,000,000[1] |
興行収入 |
$172,989,651[1] $108,638,745[1] 13億円[2] |
『ブラックホーク・ダウン』(Black Hawk Down)は2001年のアメリカの戦争映画。1993年に実際にソマリアでおこった壮烈な『モガディシュの戦闘』(米軍を中心とする多国籍軍とゲリラとの市街戦)を描いている。監督はリドリー・スコット、主演はジョシュ・ハートネット。
タイトルに出てくる「ブラックホーク」とは、米軍の多用途ヘリコプターUH-60 ブラックホークの強襲型、「MH-60Lブラックホーク」の事である。キャッチコピーは「あなたは この戦争に言葉を失う。しかし、知るべき時が来た。」。
あらすじ[]
1993年、国際世論におされた米軍は民族紛争の続くソマリアへ派兵。内戦を終結させようと、最大勢力ババルギディル族を率いて和平に反対するアイディード将軍の副官2名を捕らえるため、約100名の特殊部隊を首都モガディシュへ強襲させた。
当初、作戦は1時間足らずで終了するはずだったが、作戦の開始直後に、アイディード将軍派の民兵の攻撃により、2機のヘリコプター、ブラックホークがRPG-7によって撃墜されてしまう。
敵地の中心へ仲間たちの救出に向かう兵士らは、泥沼の市街戦に突入していく…。
作品の特徴[]
本作はソマリア内戦への超大国による介入とその失敗を描いたノンフィクション小説『ブラックホーク・ダウン アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録』(マーク・ボウデン著、日本版は伏見威蕃訳・早川書房刊)を映画化したものである。
映画版における最大の特徴は、その徹底した描写である。従来の戦争映画とは違い、状況説明を最小限にとどめ、作品のほとんどを戦場という状況の直接描写に徹した点にある。喧騒とした街に突如として降下するアメリカ兵、一般住民と民兵が入り混じった乱戦、少数精鋭のアメリカと数で押す民兵、現場と司令部との齟齬など、分かりやすい正規戦をモチーフとしたこれまでの戦争映画とは違い現代の不正規戦における混乱が的確に描写されている。
映画化に際し、原作者のマーク・ボウデン本人が脚本に参加。映画化に際し、登場人物のカットや、複数の登場人物を一人の映画キャラクターの要素に詰め込むなど多すぎる登場人物の整理が行なわれた。後日談なども大幅にカットされている。
撮影は、実際のモガディシュがいまだ政情不安のため、地形の似たモロッコで実施された。主人公エヴァーズマン二等軍曹のモデルとなったマット・エヴァズマン退役曹長はロケーションを見学してモガディシュの戦闘を思い出し、足のすくむ思いをしたという。
映画的な誇張が散見されるものの、基本的にはリアリティを求めた映像作りがなされている。近年の映画同様、本作でもCGが多用されているが、あくまでも撮影技術の限界を解決する為だけに用いられている。たとえばエヴァーズマンとブラックバーンがダウンウォッシュの砂煙に包まれるシーンでは、実際の砂煙に包まれると撮影が困難であるため、砂はCGで合成された。ブラックホークが墜落するシーンは当初実物大模型での撮影が試みられたものの、重量感が不足した為に、本物とCGで創り直された。このCGを作成する際、実際にSH-3 シーキングが墜落したときの記録映像が参考にされ、モデリングされた。
原作・史実との相違点[]
上記以外にも、長さや演出の都合などから様々な描写が原作や史実と異なっている。
- 映画冒頭でエヴァーズマンらが食糧配給所での虐殺・略奪行為を目撃するシーンは、内戦状態を端的に描写するため創作されたものである。
- レンジャーのヘルメットに兵の名前(姓)が書かれていたが、これも実際には書かれておらず、登場人物をわかりやすくするための創作である。
- 武器商人のアリ・アットはモガディシュに拘留され、ガリソン少将の尋問を受けるような描写があったが、実際の捕虜たちは国外の米軍基地へ移送されていた。
- 劇中では特に触れられていないが、実際には作戦の一週間前に1機のブラックホークが既に撃墜されており、米兵たちの間では緊張が高まっていた。また作戦当日、劇中で描写された撃墜された3機以外にも、さらに1機のブラックホークが被弾・不時着し、そのまま飛行不能となっている。
- 米軍が単独作戦を執った理由について映画では描かれていないが、原作では国連職員とアイディード派との間に癒着があったのではないかと米軍が疑っている様子がほのめかされている。
- 民兵のテクニカル(市販車改造の戦闘車両)が多数登場するが、実際には米軍の航空支援によって真っ先に破壊されることが予想されたため、戦闘中はほとんどが隠匿されていた。
- 劇中ではレンジャーの降下チームは予定通り目標ブロックの四角に降下しているが、実際はチョーク4(北西担当)は落としたロープが地上の車両に乗ってしまい、それを降ろす為ヘリを移動、目標地点(建物西北の角)より100mほど北に降下してしまっている。そのためブラックバーンの移送に手間取った。
- 映画ではブラックホークがRPG-7を発見、発射後に回避している。RPG-7は対戦車火器としては速度が遅い方だが、弾頭は装薬によって砲身から飛び出した直後に推進用ロケットに点火する方式で、初速は劇中の描写よりずっと速く、目視距離で発射を目撃した後で命中軌道から回避するのは現実的にはほぼ不可能である。(通常、所持・構えた敵兵を発見した時点で回避行動がとられる)
- ピラが戦死したとき部隊全体にそれが知らされているが、報告したストルッカーは兵士の動揺を防ぐため報告したくは無かった模様。実際には通常の無線通信だったにもかかわらず現場に伝わっておらず、車両部隊の指揮官であるマクナイトですら基地に帰還するまでピラの戦死を知らなかった。また、劇中で彼は銃座で被弾しているが実際は右後部座席で被弾している。劇中でピラは一人で寸劇をしていたが、実際はネルソンとコンビを組んでいたらしい。
- 劇中のエヴァーズマンは目標のビルから直接墜落地点へ向かったが、実際にはマクナイトに直接指示されてハンヴィーに乗って墜落現場へ向かったため、現場にたどり着けず車両部隊と共に一旦基地へ戻っている。原作ではその際、班の半数以上が負傷していることにショックを受けている描写があるが、その後墜落現場に向かう車両隊に加わったかどうかは書かれておらず、マクナイトの命令で空港を警備していた模様。マクナイトも負傷していたため再出撃はしていない。
- 劇中後半のエヴァーズマンはチョーク1の指揮官であるラリー・ペリーノ中尉がモデルであると考えられる。そのため部下の構成が原作と異なる。スミスやグライムズ(原作ではステビンズ)はチョーク4のエヴァーズマンでは無くペリーノの部下で(ステビンズはサイズモアの交代要員だったため、サイズモアもペリーノの部下であると考えられる)、トゥオンブリー・ネルソン・ユーレク・ウォデルはチョーク2のディトマソ中尉の部下である。車両部隊で背後から撃たれたジョイス及び彼を回収したテルシャー(名前は出てこない)は原作ではエヴァーズマンの部下である。劇中のチョーク4で実際にエヴァーズマンの部下だったのは新兵のブラックバーンと通信士のギャレンタインだけである。ただし原作の通信士は別人。
- 序盤でギャレンタイン(原作ではムーア)がスティールにブラックバーンが負傷したことを伝えようとして通じなかったのは、ムーアがロープ降下の際にロープと一緒に通信機のコードを掴んでしまい、焼き切れてしまった為である。原作ではその後車両部隊と行動を共にしたため、彼の通信機が必要になる状況は無かったようなので大した害はなかったと思われる。なお、エヴァーズマンの通信もスティールには通じず、ペリーノが応答している(劇中と同様に雑音などで聞き取れなかったようだが)。
- ブラックバーンやスミスの応急処置を行った衛生兵シュミッドは映画ではエヴァーズマンの部下だが、実際はデルタチームの隊員である(二人への処置はシュミッドが行ったが、チョーク4の衛生兵は別にいる。シュミッドは降下直後にエヴァーズマンとペリーノの無線を聞き、応援に来た)。階級もエヴァーズマンの二等軍曹に対し一等軍曹と、シュミッドのほうが上である。
- 車両部隊への襲撃で、RPGの直撃でデルタ隊員(ティム・“グリッツ”・マーティン)が重傷(下半身喪失)を負ったとき、オシックが、千切れた左手を見つけ自分のポーチに回収しているが、これはその後、トラック運転席でRPG(不発)に左ドアから貫かれ切断されたコワルスキィの腕である(グリッツの左腕は無事な事が画面上でも確認できる。負傷した状況は原作通りだが、手はオシック以外のレンジャー(アーロン・ハンド)が見つけ、デルタ隊員がコワルスキィのポケットに入れた)。つまり、映画では何故か手を回収するシーンだけが前の別のソーンに繋げられている。グリッツ、コワルスキィ共に戦死しているが、基地に戻った時点では両名とも意識は無かったものの生存していた。
- ストルッカー達が再出動する際に、サイズモアがギプスを銃剣で切り裂こうとするシーンがあり実際にこのようなポーズをしたかどうかの記述は原作にはない。サイズモアはギブスを格納庫に戻って鋏で切って出動している。
- スティールが率いるレンジャーは墜落現場から離れた場所で足止めされたように描かれているが、実際には1ブロック程度しか離れておらず、他の隊と墜落現場を確保していた。
- 夜間リトルバードが米兵を取り囲む民兵を掃射するために、レンジャーが民兵の位置を赤外線ストロボでマーキングする描写があったが、実際には米兵の場所をストロボで示し、それ以外の区域が掃射された。また映画ではエヴァーズマンが設置を行うが、現実の作戦ではトゥオンブリーが行っている。実際に着弾による砂煙でトゥオンブリーの姿が見えなくなるほどの弾幕にさらされたが、無傷で生還している。
- 途中で第一墜落現場に降下するウィルキンソンはデルタの衛生兵として描かれているが、実際は空軍の特殊部隊のパラジャンパー(墜落した機体の搭乗員の救出及び機体の電子機器のメモリー・バンク(機密データが含まれる)の破壊が主任務)である。負傷者を治療するために銃撃に晒されながら各拠点を行き来しており、後にこの戦闘の功績で空軍十字章を受賞している。
- エンドロールにて米兵の戦死者19名の氏名が表示されるが、作戦「当日」の戦死者は18名である。残る1名は後日、米軍基地に対する迫撃砲攻撃で死亡した(マット・リアソン)。当日撤退時にPKF側で戦死したマレーシア兵を含めると19名にはなるのだが、エンドロールには書かれていない。
- またPKF側としてパキスタン軍が登場するのに対し、マレーシア軍についての描写がまったくない。
ブラックホーク・ダウンに登場する兵士のモデルになったアメリカ陸軍兵士ジョン・ステビンズ(36)は、2000年6月、12歳未満の少女(6歳の実の娘)を強姦した罪で懲役30年を言い渡され[3]服役となったが、軍はこの事実を隠すため原作者マーク・ボウデンにキャラクター名を変えるように圧力を掛けていた。その結果、役名が「ジョン・グライムズ」と変わっている。
スタッフ[]
- 製作総指揮:ジェリー・ブラッカイマー
- 監督:リドリー・スコット
- 原作:マーク・ボウデン
- 文庫本:ブラックホーク・ダウン―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 ISBN 4150502641(上)/ISBN 415050265X(下)
- 単行本:強襲部隊―米最強スペシャル・フォースの戦闘記録 ISBN 4152082569
出演[]
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
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DVD版 | TV版 | ||
レンジャー第4チョーク班長マット・エヴァーズマン二等軍曹 | ジョシュ・ハートネット | 竹若拓磨 | 平田広明 |
同ジョン・グライムズ特技下士官 | ユアン・マクレガー | 森川智之 | |
車輌部隊指揮官ダニー・マクナイト中佐 | トム・サイズモア | 岩崎ひろし | 立木文彦 |
デルタフォースの古参兵"フート"一等軍曹 | エリック・バナ | 山野井仁 | 山路和弘 |
同上ジェフ・サンダーソン一等軍曹 | ウィリアム・フィクトナー | 牛山茂 | 大塚芳忠 |
作戦の指揮官ウィリアム・F・ガリソン少将 | サム・シェパード | 有本欽隆 | 津嘉山正種 |
レンジャー、トッド・ブラックバーン上等兵 | オーランド・ブルーム | 川村拓央 | 平川大輔 |
ショーン・ネルソン特技下士官 | ユエン・ブレムナー | 青山穣 | 檀臣幸 |
ランス・トゥオンブリー特技下士官 | トム・ハーディ | ||
スーパー64パイロット、マイク・デュラント准尉 | ロン・エルダード | 木村雅史 | 成田剣 |
スーパー61パイロット、クリフ"エルヴィス"ウォルコット准尉 | ジェレミー・ピヴェン | ||
カート・シュミッド衛生兵 | ヒュー・ダンシー | 斉藤次郎 | |
ジョン・ビールズ中尉 | ヨアン・グリフィズ | 飯島肇 | |
レンジャー地上部隊指揮官マイク・スティール大尉 | ジェイソン・アイザックス | 石住昭彦 | 菅生隆之 |
デルタフォースの狙撃兵ランディ・シュガート一等軍曹 | ジョニー・ストロング | 川中子雅人 | |
同上ゲイリー・ゴードン曹長 | ニコライ・コスター=ワルドウ | 清水敏孝 | |
トム・マシューズ中佐 | グレン・モーシャワー | 辻親八 | |
ゲイリー・ハレル中佐 | ジェリコ・イヴァネク | 谷昌樹 | |
ジョー・クリッブス中佐 | スティーブン・フォード | 仲野裕 | |
ダニエル・ブッシュ一等軍曹 | リチャード・タイソン | 遠藤純一 | |
ドノヴァン・ブライリー准尉 | パベル・ボーカン | 滝知史 | |
ジェイミー・スミス伍長 | チャーリー・ホフハイマー | 平川大輔 | |
エド・ユーレク二等軍曹 | トム・グアリー | 江川大輔 | |
ドミニク・ピラ三等軍曹 | ダニー・ホック | 佐藤晴男 |
TV版役不明:仲野裕/水野龍司/後藤敦/小形満/咲野俊介/大友龍三郎/斎藤志郎/中博史/宇垣秀成/吉田孝/三宅健太/高瀬右光/河本邦弘/羽多野渉/根本泰彦/土田大/加瀬康之/坪井智浩/小野大輔
カメオ出演[]
93年に実際にこの作戦に従事して無事帰還したアーロン・A・ウィーバー[1]というレンジャー隊員が居る。彼は補給任務に就いていたので原作の作戦参加将兵リストに記載されていないが、ブラックホーク墜落の報を受け現場へ救出に向かっている。映画の終盤でデルタ隊員にコーヒーを手渡す役という形でカメオ出演していた。彼は2004年のイラクのファルージャにおいて、ヘリでの移動中に撃墜されて死亡した。元隊員達によるDVDオーディオコメンタリーによると、他にも元隊員のカメオ出演がある。「ディトマソ」と無線で呼ばれるチョーク班長、墜落現場へ急行するOH-6リトルバード「スター41」のパイロット、再び出撃するストルッカー軍曹の車両隊に飛び乗る眼鏡をかけた隊員などである。
脚注[]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 “Black Hawk Down (2001)” (英語). Box Office Mojo. 2010年4月8日閲覧。
- ↑ “日本映画産業統計 過去興行収入上位作品 (興収10億円以上番組) 2002年(1月~12月)”. 社団法人日本映画製作者連盟. 2010年4月8日閲覧。
- ↑ “テンプレート:PDFlink” (en) (2005年8月30日). 2011年2月24日閲覧。
関連項目[]
- モガディシュの戦闘
- デルタフォース
- UH-60 ブラックホーク
- AH-6/MH-6リトルバード
- CQB
- マーク・ボウデン
- The Minstrel Boy - エンディング曲
テンプレート:リドリー・スコット監督作品